共同経営で経営管理ビザを複数名取得する客観的条件:出資比率と業務分担の厳格なルール

複数人の投資家やビジネスパートナーで資金を出し合い、国内で法人を設立する。「出資者として名を連ねているのだから、全員が経営管理ビザを取得できるはずだ」という仮説は、入管実務において極めて危険な誤解です。

出入国在留管理局(入管)の審査において、経営管理ビザは「1社につき原則1名(トップのみ)」に付与されるのが基本原則です。2名以上の外国人が同時にこのビザを取得するためのハードルは途方もなく高く、少しでも曖昧な事業計画で申請に踏み切れば、「2人分の独立した経営業務が存在しない」として容赦なく不許可(共倒れ)の判断が下されます。

本記事では、複数人での起業を合法的に成立させ、共同経営者全員がビザを勝ち取るために満たすべき「厳格な立証条件」を論理的に解説します。

Contents

1. 原則「1社1名」:複数名の取得が困難な法的背景

なぜ入管は複数名の経営管理ビザを厳しく制限するのでしょうか。それは、会社規模に見合わない人数の経営者が存在することは、ビジネスとして不自然だからです。小規模な会社であれば、経営者は1名で十分であり、他のメンバーは「技術・人文知識・国際業務」などの従業員ビザで雇用されるのが本来の姿です。

それでも2人以上が「経営者」としてビザを取得するためには、それぞれの業務が従業員レベルの作業(現場労働や単純な事務)ではなく、完全に「経営・管理」の範疇にあり、かつフルタイムで行うだけの業務量が存在することを客観的なデータで証明しなければなりません。

2. 条件①:出資比率による「意思決定権」の明確化

共同経営において「平等に50%ずつ出資する」という選択は、審査において極めて不利に働きます。会社法上、株式の50%ずつを保有している状態では、意見が対立した際に株主総会での決議がデッドロック(膠着状態)に陥り、事業の継続性が著しく危ぶまれると入管に判断されるためです。

最終的な経営責任と意思決定権が誰にあるのかを明確にするロジックが必須です。例えば「代表取締役Aが51%以上、取締役Bが49%以下」といったように、出資比率に意図的な差を設け、有事の際の意思決定プロセスが機能する組織構造を定款や株主間協定書で提示する必要があります。

3. 条件②:「業務分担」の完全な分離と業務量の立証

入管が最も厳格に審査するのは、「本当に2人(複数人)の経営者が必要な規模のビジネスなのか?」という点です。「2人で一緒に経営全般を見ます」「相談して決めます」という曖昧な説明は一発で不許可となります。

それぞれが担当する業務領域を完全に分離し、各分野のトップ(部門責任者以上の権限)として機能していることを、詳細な職務記述書(Job Description)を用いて証明する必要があります。

  • 【分担の客観的モデル例】
    • 経営者A(CEO): 海外市場の開拓、輸出入ルートの統括、海外取引先との交渉、財務・資金調達の決定。
    • 経営者B(COO): 国内営業の統括、商品開発部門の指揮、国内での人事労務管理、国内アライアンスの構築。

さらに、それぞれの業務が「毎日8時間、経営・管理業務だけで埋まる十分な業務量」であることを、売上予測、想定される取引件数、雇用する従業員数などの数値データに基づき、緻密な事業計画書によって立証しなければなりません。

4. 条件③:事業規模と「役員報酬」の妥当性

2人の経営者が存在するということは、会社は2人分の「役員報酬(独立して生計を維持できる十分な金額)」を毎月支払い続けなければなりません。設立直後の事業計画において、2人分の報酬を支払い、かつ会社として利益を出せるだけの十分な売上規模(資本金の大きさ、取引先との契約状況)が確保されているかが問われます。売上見込みが低い事業計画では、「2人を経営者として維持する経済的合理性がない」と判断されます。

5. 共同経営におけるトラブル事例とリスク回避策

事例A:業務の重複による不許可

【状況】 2人で飲食店を開業し、双方が「店舗の運営管理、スタッフの指導」を担当すると事業計画書に記載した。
【結果】 1店舗の管理に2名の経営者は不要であり、実際には接客や調理などの「現業(単純労働)」を行う疑いが高いと判断され、双方が不許可となった。
【回避策】 店舗型ビジネスの場合、多店舗展開を前提とする、あるいは1人が「店舗開発・資金調達」、もう1人が「現場統括・メニュー開発指揮」と完全に権限を分ける等、業務の重複を徹底的に排除した計画が必要です。

事例B:名ばかりの共同経営

【状況】 友人のビザ取得を助けるため、出資だけさせて「共同経営者」として申請した。
【結果】 職務の実態や経営への関与を示す客観的証拠がなく、虚偽の申請とみなされた。
【回避策】 経営管理ビザは「投資ビザ」ではありません。出資するだけでなく、実際に経営に参画し、権限を行使している実態の証明が不可欠です。

6. 結論:安易なチーム起業による「共倒れ」の回避

共同経営による経営管理ビザの申請は、単独での申請とは次元の異なる「高度な立証作業」が求められます。業務の棲み分け、出資比率による意思決定の合理性、そして事業規模の妥当性がミリ単位で審査され、少しでも疑義が生じれば、一人は許可、もう一人は不許可(あるいは全員不許可)という最悪の事態を招きます。

法人を設立し、資本金を投下してしまう前に、あなたのチームの構想が入管の厳格な審査基準に耐えうるか、事業計画の客観的な妥当性を徹底的に検証し、盤石な体制を構築してから手続きを進めてください。

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