日本の高度専門職ビザ。ポイント計算における「年収」の落とし穴とボーナスの算入基準

最短1年または3年で日本の永住権を取得できる「高度専門職(Highly Skilled Professional)」ビザ。エリート層の外国人材にとって最も魅力的なこの在留資格は、学歴・職歴・年齢・年収などの「ポイント計算」で70点以上を獲得することが絶対条件となります。

しかし、このポイント計算において最も不許可リスクが高く、多くの申請者が罠に陥るのが「年収」の項目です。「自分の年収なら余裕でポイントをクリアしている」と主観的に思い込んで申請し、入管の厳格な審査によってポイントを削られ、結果的に70点を下回り不許可に陥るケースが後を絶ちません。

この記事では、高度専門職ビザにおける「年収」の正しい定義と、算入できる手当・除外される手当の明確な境界線、そして審査を客観的な証拠で突破するための雇用契約書の設計アプローチを解説します。

Contents

1. 最大の誤解:「過去の年収」ではなく「未来の予定年収」

【サマリー】入管が審査するのは「今後1年間に日本の受入機関から支払われる予定の確実な報酬額」であり、母国や前職での過去の年収は1円も計算されません。

ポイント計算における年収について、多くの人が「直近1年間の源泉徴収票の額面」や「前職の年収」だと勘違いしています。これは致命的な誤りです。

入管法上、高度専門職のポイントとして評価されるのは、「これから日本の受入機関(会社)で働くにあたって、今後1年間に支払われる予定の報酬額」のみです。過去に母国や別の外資系企業で1,000万円を稼いでいた実績があったとしても、新しく入社する日本の会社での契約上の基本給が500万円であれば、ポイント計算の対象は「500万円」となります。

2. 算入できる手当と「除外」される手当の明確な壁

【サマリー】通勤・住宅・扶養手当などの実費補助や、支給額が変動する超過勤務手当(一般的な残業代)は年収から完全に除外されます。

会社の給与明細に記載される「総支給額」が、そのまま年収として認められるわけではありません。入管法上、報酬として「算入できるもの」と「除外されるもの」は厳密に区別されており、この仕分けを間違えると即不許可に繋がります。

  • 【除外される手当】絶対に計算に入れてはいけないもの
    通勤手当、扶養手当、住宅手当、別居手当、超過勤務手当(残業代)などは、ポイント計算の年収からすべて除外されます。実費の補填という性質が強いためです。これらを含めて70点ギリギリで計算していると、入管の審査でマイナス調整され、足切りに遭います。
  • 【算入できる手当】ポイントとして認められるもの
    基本給のほか、役職手当や資格手当など「毎月固定で支払われる性質のもの(労働の対価)」は算入可能です。また、固定残業代(みなし残業代)については、雇用契約書に「毎月必ず支払われる固定の金額」として明確に規定されていれば報酬に含めることができます。

3. ボーナス(賞与)はどこまで計算に入れられるか?

【サマリー】「業績に応じて支給する」といった不確定なボーナスは算入不可です。雇用契約書に「基本給の〇ヶ月分を必ず支給する」という確約の明記が絶対条件となります。

ボーナスは「年収」に加算してポイントを稼ぐことができますが、これにも厳しいエビデンスが求められます。単に「昨年は賞与が100万円出たから今年も出るはずだ」という口頭の主張や、過去の支給実績の提示だけでは入管は認めません。

ボーナスを予定年収に組み込むための絶対条件は、「雇用契約書(または労働条件通知書)に、賞与の支給額が客観的に確約されていること」です。「会社の業績に応じて支給する」「個人の評価により決定する」といった不確定な業績連動型ボーナスは、未来の確実な報酬とは見なされず、審査では1円も計算に入れてもらえません。

4. 実務的Q&A:年齢問わず「最低年収300万円」の絶対条件

【サマリー】予定年収が300万円を下回る場合、どれだけ学歴や職歴で高得点を稼いで70点を超えても、高度専門職ビザは自動的に不許可となります。

Q. 学歴と職歴だけで80点あります。年収が280万円でもビザは取れますか?

A. 取れません。高度専門職のポイント計算には、絶対に見落としてはならない「足切りライン」が存在します。それが「予定年収300万円以上」という基準です。海外の有名大学の博士号を持ち、日本語能力もN1で、ポイント合計が80点を超えていたとしても、前述の除外手当を引いた日本の会社との契約年収が「299万円以下」であれば、申請は瞬時に不許可となります。

Q. ビザ取得後に年収が下がってしまった場合、どうなりますか?

A. 高度専門職ビザは「70点以上を維持していること」が在留の要件です。更新時に年収が下がり、ボーナスのカット等によって70点を下回ってしまった場合、高度専門職ビザの更新はできず、通常の「技術・人文知識・国際業務」ビザ等へダウングレードする手続きが必要になります。

結論:ミリ単位の「雇用契約書の設計」が成否を分ける

高度専門職ビザの「年収ポイント」を確実にもぎ取るためには、企業側の採用・人事担当者による「法的に緻密な雇用契約書の作成」が必要不可欠です。入管の審査官は、本人の潜在的な能力や企業の規模ではなく、「契約書の書面データ」のみで機械的に計算を行います。

ボーナスを算入させるなら金額と支給時期を明記し、固定残業代を入れるなら基本給と明確に分けた上で規定する。この初期段階での書面の整合性こそが、エリート層のビザを確実に通し、日本への安全なリロケーションを実現するための法務ロジックのすべてです。

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