「同じグループ会社への転籍だから、社内の人事異動の手続きだけで問題ないだろう」
日本国内における企業のM&Aや子会社化、事業譲渡などの組織再編に伴い、「企業内転勤(Intra-company Transferee)」ビザを持つ外国人社員の所属先が変わるケースが増加しています。しかし、この法務手続きを社内ルールのみで完結させるのは、入管法において致命的なミスです。
企業内転勤ビザは、「特定の法人間の結びつき」を根拠に発行される極めて特殊な在留資格です。所属先法人の変更を伴う異動は、ビザの存立基盤そのものを揺るがす行為であることを正確に理解しなければなりません。
1. 命綱となる「資本関係の継続性」の立証
企業内転勤ビザが合法と認められる絶対条件は、外国の事業所(出向元)と日本の事業所(転籍先)の間に、入管法が定める厳格な「資本関係(親会社・子会社・関連会社等)」が存在することです。
組織再編や転籍によって所属法人が変わった場合、この資本関係が途切れていないか、あるいは新たな転籍先との間にも適法な結びつきがあるかを、入国管理局に対して客観的な資料(出資比率を示す株主名簿や法人登記簿、相関図など)をもって直ちに立証・届出する義務があります。この連鎖が1ミリでも崩れれば、その時点から日本での就労は「不法就労」とみなされます。
2. 「業務の専門性」からの逸脱リスクを再検証する
転籍先の法人との資本関係がクリアできても、もう一つの罠が待ち受けています。それが「業務内容の逸脱」です。
企業内転勤ビザで許されているのは、大卒レベルの専門知識を要する業務(技術・人文知識・国際業務に相当する内容)のみです。もし転籍先の子会社で、現場の単純作業や販売スタッフ、工場のライン作業などを任されることになれば、直ちに資格外活動違反に問われます。転籍後の新しい職務内容が、専門性を逸脱していないかを厳密に再定義し、それを論理的に説明できる職務説明書を準備しなければなりません。
3. 「所属機関の変更届」と「在留資格更新」の戦略的連携
所属先法人が変わった場合、外国人社員は変更日から「14日以内」に入管へ「所属機関等に関する届出」を行う法的義務があります。これを怠ると次回のビザ更新時に極めて不利な扱いを受けます。
また、次回の更新時期が迫っている場合は、届出だけでなく、組織再編の事実と新しい職務内容の適法性を同時に証明する「更新申請」を緻密に組み上げる必要があります。企業の経営戦略(人事・組織再編)と、外国人材の法務戦略(入管法)の足並みを揃えることこそが、日本社会でのビジネスを安全に継続するための防衛策です。