家族滞在ビザで滞在する外国人配偶者や子どもが「資格外活動許可」を取得し、アルバイトを行うケースは非常に一般的です。近年、世帯収入を増やすために複数のアルバイトを掛け持ち(ダブルワーク)するケースが増加していますが、ここにはビザ更新不許可に直結する致命的な「計算の罠」が潜んでいます。
本記事では、資格外活動における「週28時間制限」を掛け持ちで行う際の厳格な入管法のルールと、オーバーワーク(不法就労)を防ぐための論理的な防衛策を解説します。
1. 「事業所ごと」ではなく「個人単位の合算」という原則
最も多い勘違いが、「A社で週20時間、B社で週15時間なら、それぞれの会社では28時間以内だから問題ない」という認識です。
入管法における週28時間制限は、事業所単位ではなく「外国人本人の労働時間の合計」で計算されます。複数のアルバイトを掛け持ちしている場合、すべての勤務時間を合算して週28時間以内に収めなければなりません。雇用主側は他社での勤務時間を把握していないことが多いため、労働者本人が自己管理を徹底しない限り、容易に上限を超過してしまいます。マイナンバー制度の普及により、複数箇所からの給与収入は税務申告を通じて入国管理局に完全に把握されます。
2. 最大の地雷「どの曜日から起算しても」週28時間以内
掛け持ちにおいて最も危険な罠が、1週間の「起算日」の概念です。
多くの場合、「月曜日から日曜日までの合計が28時間以内であればよい」と誤解されています。しかし、入国管理局の審査基準は「任意のどの日から起算した7日間であっても、常に週28時間以内に収まっていること」です。
例えば、A社でのシフトが週末に集中し、B社でのシフトが翌週の週初めに集中した場合、カレンダー上は週をまたいでいても、「木曜日から翌週水曜日までの7日間」で切り取って計算した際に28時間を超えていれば、その時点でオーバーワーク(不法就労違反)と判定されます。掛け持ちによる不規則なシフトは、この違反を無自覚に引き起こす最大の要因です。
3. 留学生の「長期休暇中の特例」は適用されない
「留学ビザ」を持つ外国人は、夏休みや冬休みなどの学則で定められた長期休業期間中に限り、「1日8時間(週40時間)」まで労働時間が拡大される特例があります。
しかし、「家族滞在ビザ」にはこの長期休暇の特例は一切存在しません。ゴールデンウィークや年末年始など、どれほど長期間の休みであっても、家族滞在ビザである限り「年間を通じて常に週28時間以内」という絶対ルールが適用されます。留学生の友人と同様の感覚でシフトを入れてしまうと、即座に違反となります。
法的なトラブルを未然に回避するために
オーバーワークによる入管法違反は非常に厳しく取り締まられており、超過の記録が残れば、次回のビザ更新は原則として不許可となります。また、扶養者(メインの就労ビザ保持者)の在留資格更新や将来の永住許可申請にも致命的な悪影響を及ぼします。
掛け持ちを行う場合は、日々の労働時間を分単位で客観的に記録し、いかなる7日間を切り取っても28時間を超えないよう厳格にシフトを管理することが必須です。もし労働時間の計算や過去のシフト履歴に不安がある場合は、更新申請を行う前に、入管業務に精通した行政書士や弁護士などの有資格者に相談し、法的に安全な状態であるか客観的な確認を受けた上で手続きを進めることが求められます。