共同創業者として起業するなら「高度専門職1号ハ」と「経営管理ビザ」のどちらを選ぶべきか?資本金3000万円要件と複数名取得の審査突破ガイド

「外国人パートナーと共同でスタートアップを設立するが、自分たちは『高度専門職ビザ(1号ハ)』と『経営管理ビザ』のどちらを申請すべきなのだろうか?」

「複数人の共同創業者がそれぞれビザ(在留資格)を取得する場合、どのような条件や注意点があるのだろうか?」

日本で優れたスキルや資金力を持つ外国人エリート層が共同で事業を立ち上げる際、ビザの選択は会社の成長スピードや家族の生活基盤に直結する極めて重要な戦略的課題です。

特に法改正により**経営管理ビザの要件が「資本金3,000万円以上・常勤職員1名以上」へと厳格化された**現在、複数人の共同創業者が全員「経営管理ビザ」を取得するハードルは激増しています。

本記事では、共同創業において「高度専門職1号ハ」と「経営管理ビザ」のどちらを選択すべきか、審査基準・資本金要件・永住権・家族帯同特権の観点から徹底比較し、共倒れを防ぐための実務アプローチを解説します。

Contents

1. 共同創業における「高度専門職1号ハ」VS「経営管理ビザ」比較一覧

共同創業者が検討すべき2つのビザの主要な違いは以下の通りです。

  • 要件・ハードル: 経営管理ビザは「事業規模(資本金3,000万円〜、オフィス、常勤職員)」が厳密に審査されます。高度専門職1号ハは事業規模に加え、「本人のポイント(学歴・職歴・役員報酬等で70点以上)」の立証が必須となります。
  • 複数名での取得(共同経営): 経営管理ビザの場合、1社で複数名が取得するには「役員報酬額の完全分離」「明確な役割分担(代表取締役・役員等の権限分担)」「事業規模の重複(実質2社分以上の規模)」が厳格に問われます。高度専門職1号ハの場合、本人の高度人材としての客観的ポイントが重視されるため、個人の要件をクリアしていれば複数人取得の審査が有利に働きます。
  • 永住権(PR)獲得期間: 経営管理ビザは原則「10年以上の在留(経営者として数年間の安定実績)」が必要です。高度専門職1号ハはポイント70点で「3年」、80点で「最短1年」で永住許可申請が可能となります。
  • 家族帯同特権: 経営管理ビザでは親の帯同は不可、配偶者の就労は週28時間制限(家族滞在)となります。高度専門職1号ハでは世帯年収800万円以上かつ7歳未満の子がいる場合の「親の帯同特権」や、配偶者の「フルタイム就労特権(特定活動33号)」が認められます。

2. 「高度専門職1号ハ」を選ぶべき共同創業者のケース

共同創業において、自身またはパートナーが以下の条件に当てはまる場合は、「高度専門職1号ハ」を選択するのが圧倒的に有利です。

ケース①:学歴・職歴・役員報酬でポイント70点(または80点)をクリアできる場合

海外・日本の大学卒業(学士・修士・博士)、過去の経営・管理実務経験(3年〜10年以上)、および新会社から支払われる役員報酬(例:年収1,000万円以上等)を合算してポイントが70点以上に達する場合です。

客観的な数値基準で審査されるため、入管審査官に対して共同創業者としての必然性や優秀性を論理的に立証しやすくなります。

ケース②:最短で「永住権」を取得し、事業の選択肢を広げたい場合

起業後、1年〜3年という最短期間で永住権(PR)を獲得したいエリート創業者に最適です。永住権を取得してしまえば、ビザの更新や就労・事業内容の制限から完全に解放され、投資家からの資金調達やM&A、新事業展開が極めて円滑になります。

ケース③:配偶者のキャリア維持や、本国から「親呼び寄せ」を行いたい場合

共同創業者の配偶者が日本でフルタイムで働き世帯収入を増やしたい場合(特定活動33号)、あるいは幼い子どもの子育てや家事を手伝ってもらうために本国から親を帯同させたい場合は、高度専門職1号ハの特権が不可欠となります。

3. 「経営管理ビザ」を選ぶべき共同創業者のケース

一方で、以下の状況に当てはまる場合は、王道である「経営管理ビザ」を選択することになります。

ケース①:高度専門職のポイント算定で70点に達しない場合

大卒未満である、過去の管理職経験が短い、あるいは新会社の初期キャッシュフローを優先して役員報酬を低く設定せざるを得ず、ポイントが70点未満に留まる場合です。この場合は、会社として資本金3,000万円以上および常勤職員要件を満たした上で、経営管理ビザを申請します。

ケース②:事業規模が極めて大きく、出資・業務分担を明確に区分できる場合

共同創業者がそれぞれ多額の出資(例:各自3,000万円以上)を行い、一方は「CEO(最高経営責任者)」として全般経営を担当し、他方は「CTO(最高技術責任者)」や「COO(最高執行責任者)」として明確に異なる役員権限と担当部署を統括している場合です。

入管に対して「1社の中に2名の経営管理ビザ保持者が絶対に不可欠である」という客観的物証(組織図、業務分担規定、取締役会選任理由書等)を提示できれば、全員の経営管理ビザ取得が可能です。

4. 共同創業における「共倒れ(全員不許可)」を防ぐ実務タイムライン

共同創業者のビザ申請で最も避けるべきは、入管から「役割の重複」や「名ばかり役員」と疑われ、創業メンバー全員が不許可になるトラブルです。

  • STEP 1(資本金・出資比率の設計): 資本金3,000万円以上の出所追及(見せ金疑いの払拭)に備え、各自の資金ルートを証明。複数名取得の場合は出資比率(意思決定権)のバランスを法理に基づき調整。
  • STEP 2(定款・役員報酬・業務分担の個別明確化): 定職・取締役会規程において、共同創業者の職務範囲(CEO・CTO・CFO等)と指揮命令系統を完全分離。役員報酬もそれぞれの貢献度と経営責任に応じた適正額を設定。
  • STEP 3(高度専門職ポイントの判定・比較): 創業メンバー各自のポイント計算を実施。「一人だけ高度専門職1号ハ+他方は経営管理ビザ」という組み合わせスキームも含め、最も通過率の高いビザ構成を決定。
  • STEP 4(事業計画書と理由書の同時提出): 入管へ提出する事業計画書において、共同創業体制をとる合理性と事業の継続性・収益性を数字に基づいて客観的に証明。

5. 実務でよくある疑問・注意点(Q&A)

共同創業でのビザ選択に関して、現場で多く寄せられる相談への回答です。

Q1. 共同創業者のうち「一人が高度専門職1号ハ」「もう一人が経営管理ビザ」という組み合わせは可能ですか?

A. 完全にかつ非常に戦略的な組み合わせです。 高度専門職のポイントを満たすCEOが「高度専門職1号ハ」を取得し、ポイントが足りない共同創業者が「経営管理ビザ」を取得するスキームは、入管審査上も非常にロジカルです。会社全体の創業リスクを分散し、双方のビザ取得率を最大化できます。

Q2. 共同創業で複数名がビザを申請する場合、オフィスは別々に用意する必要がありますか?

A. 同じオフィスの同一空間で問題ありません。 ただし、同一オフィス内でそれぞれの経営者・役員としての執務デスクや管理体制が整えられていることが前提となります。ペーパーカンパニーや名ばかり役員と疑われないよう、オフィスのレイアウト図や設備写真を整えて提出する必要があります。

6. まとめ:自社のリソースと将来設計に合わせた最適なビザ戦略を

共同創業におけるビザ選択は、単なる手続きではなく、会社の資金・組織設計および創業メンバーの将来(永住・家族帯同)を左右する経営戦略そのものです。

法改正による資本金3,000万円要件を踏まえ、自身のポイント算定結果と共同経営体制を客観的に検証した上で、「高度専門職1号ハ」と「経営管理ビザ」の最適な組み合わせを選択することが、審査突破とスタートアップ成功の鍵となります。

共同創業者としてのビザ選択、ポイント計算、複数名での経営管理ビザ申請でお悩みの際は、高度専門職および経営管理実務に精通した専門家へご相談ください。

高度専門職ビザの実務・テーマ別完全ガイド一覧

高度専門職の優遇特権・永住権・家族帯同

転職リスク・年収低下・ビザ維持トラブル対策

ポイント計算・年収基準・ポイント立証戦略

Contents