昇給・減給で年収が変動したら高度専門職ポイントはいつ再計算されるのか?即時届出の有無と更新・永住申請での不許可リスクを防ぐ実務ガイド

「社内で昇給(または減給)があり年収が変わったが、すぐに入管へポイント再計算の届出を提出しなければならないのだろうか?」

「業績連動賞与の減少や降格で年収が下がり、ポイントが70点を割り込んでしまった場合、現在のビザは直ちに取り消されてしまうのだろうか?」

高度専門職ビザのポイント計算において、「年収」は配点が非常に大きく、70点または80点のボーダーラインを左右する最も重要な要素です。同一企業に勤務し続ける中で、定期昇給、役職手当の変更、降格、あるいは会社業績による減給などで年収が変動することは珍しくありません。

しかし、「年収が変わった瞬間にどのような手続きが必要か」「入管はいつの時点でポイントを再計算・審査するのか」を正確に理解していないと、次回のビザ更新時に不許可となったり、永住許可申請が却下されるという致命的なトラブルに直面します。

本記事では、年収変動時における出入国在留管理局への届出義務の有無、入管がポイントを再計算する「3つのタイミング」、そして減給等で70点を下回った場合の防衛実務を徹底解説します。

Contents

1. 社内での昇給・減給:即時の「届出義務」はあるのか?

結論から申し上げますと、同一企業に勤務したまま昇給や減給によって年収が変動した場合、年収が変わった瞬間に即時に入管へ届出を出したり、ポイント計算を提出し直す法的義務はありません。

入管法上、14日以内の届出が義務付けられている「所属機関に関する届出(第19条の16)」は、あくまで**「転職(退職・採用)」や「会社の名称変更・所在地変更・消滅」**が生じた場合に限られます。

同一雇用契約の枠内での給与額の改定(昇給・減給)は、転職や会社都合の変更には該当しないため、年収が変わったからといって直ちに「在留資格取消手続き」が開始されることはありません。ただし、だからといって放置してよいわけではなく、後述する入管の「審査タイミング」に向けて準備を進める必要があります。

2. 入管が高度専門職ポイントを「再計算・審査」する3つのタイミング

入管審査官があなたの最新年収を把握し、ポイントを実質的に再計算・審査するタイミングは以下の3つに厳格に限定されます。

審査タイミング審査内容と立証資料注意点・リスク
① 在留期間更新許可申請時
(ビザの更新時)
更新時点から向こう1年間に見込まれる「契約年収(年収見込証明書等)」および直前1年間の「源泉徴収票」に基づき、改めて70点以上あるかを審査。減給等により更新時点で70点を割っている場合、更新不許可(または他ビザへの変更指示)となる。
② 永住許可申請時
(高度専門職ルート)
「申請時点」だけでなく、「1年前(80点ルート)」または「3年前(70点ルート)」の時点に遡り、各時点で過去実績・見込みの双方でポイントを満たしていたかを過去の源泉徴収票で厳密に検証。途中の年度で減給があり、過去のいずれかの時点で一時的に70点割れを起こしていた場合、永住不許可となる。
③ 転職・在留資格変更申請時
(所属変更・他資格移行)
新しい転職先での提示年収や新たな契約条件に基づき、ゼロからポイントを再計算。転職による年収ダウンや年齢加点(35歳・40歳の壁)の減少により70点を下回るとビザ変更が不許可になる。

3. 減給・減収でポイントが70点を下回った場合の防衛戦略

会社全体の業績悪化や降格、時短勤務等により年収がダウンし、ポイントが70点未満になってしまった場合でも、正しくリカバリーを行えば適法に滞在を継続できます。

戦略①:次回更新時までに他項目(資格・論文・役員就任等)でポイントを補填する

年収ダウンによるポイント減少分を、他の項目で補うアプローチです。例えば、日本語能力試験N1の取得(15点加算)、業務に関連する国家資格の取得、自社での役員就任、あるいはイノベーション促進企業への加点など、次回更新までの間に別の加点要素を積み増して70点を死守します。

戦略②:更新期限の前に「技術・人文知識・国際業務」など通常の就労ビザへ切り替える

年収のリカバリーや他項目の加点が難しく、次回更新時に70点を維持できないことが確実な場合、無理に高度専門職のまま更新申請を出して不許可になるのを避ける必要があります。

在留期限が切れる前に、自ら**通常の就労ビザ(「技術・人文知識・国際業務」など)へ「在留資格変更許可申請」**を行います。通常の就労ビザであれば、大卒要件・職務関連性を満たしていればポイント計算は不要となるため、日本での適法な雇用と滞在を維持できます。

戦略③:永住申請を予定している場合、減給年度の「年収回復」を待って再申請する

高度専門職ポイントを利用した永住申請では、過去1年または3年の全期間において70点(80点)を維持していたことが厳格にチェックされます。途中で減給があり70点を割っていた年度が存在する場合、その時点で申請しても不許可になります。年収が回復し、改めて規定期間(1年または3年)ずっと70点以上をキープした実績が作られてから申請に踏み切るのが確実です。

4. 昇給・減給とポイント再計算に関する「実務タイムライン」

年収変動が発生した際に、トラブルを防ぐために踏むべきステップです。

  • STEP 1(給与改定・契約更新の発生): 社内で昇給・減給が決定した際、直ちに現在のポイント計算表を開き、最新の契約年収(見込額)を入れるとポイントが何点になるかを自己試算。
  • STEP 2(70点割れの有無の確認): 減給により70点未満になる場合、次回の在留期限(更新日)までの残期間を確認。届出義務はないため直ちに慌てる必要はないが、更新対策を開始。
  • STEP 3(更新6ヶ月前〜準備開始): 70点を回復するための加点要素を揃えるか、会社から最新の「年収見込証明書」を発行してもらう。回復不可能な場合は「技人国」ビザへの変更申請書類を作成。
  • STEP 4(更新申請または変更申請の提出): 在留期限までに、70点以上を立証できる証明資料を添付して高度専門職の更新申請を行うか、通常の就労ビザへの変更申請を提出。

5. 実務でよくある疑問・注意点(Q&A)

昇給・減給時のポイント再計算に関して、現場で多く寄せられる疑問に回答します。

Q1. 育児休業(育休)や産休による一時的な年収ダウンも、ポイント再計算で不許可の原因になりますか?

A. 合理的な事情として配慮されるケースが多いですが、立証が必要です。 育休や産休による一時的な減収は、雇用契約上の「基本年収」自体が下がったわけではないため、会社発行の理由書や復職後の年収見込証明書を提出することで、休業前の年収ベースでポイントが評価される運用がなされています。ただし、復職後に時短勤務へ完全移行し、契約年収自体が恒久的に下がった場合は最新の契約年収で再計算されます。

Q2. 年度の途中で大幅に昇給して80点を超えた場合、すぐに永住申請を出せますか?

A. 昇給によって「向こう1年間の見込み年収ベース」で80点に達した時点から、1年経過後に申請可能です。 昇給により80点に到達したからといって、その瞬間に永住申請ができるわけではありません。「80点に達した状態で1年間日本に滞在した」という実績が必要になるため、昇給後の給与支払実績や年収見込証明書を整え、1年経過したタイミングで申請を行います。

6. まとめ:年収変動時のポイント管理と計画的なビザ戦略を

同一社内での昇給・減給では直ちに入管への届出義務は発生しませんが、入管が審査を行う「更新時」「永住申請時」「転職時」の3つのタイミングにおいて、年収変動は決定的な影響を及ぼします。

年収が下がった際も焦らず、ポイントの回復措置をとるか、適切な時期に通常の就労ビザへ切り替えることで、日本でのキャリアと在留資格を安全に守り抜くことができます。

昇給・減給に伴う高度専門職ポイントの再計算、更新不許可リスクへの対策、永住申請のタイミングでお悩みの際は、高度専門職実務に精通した専門家へご相談ください。

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