就労ビザ:内定者のCOEが入社日に間に合わない時の対応と実務手順

外国人を採用する際、入国管理局の審査状況によってはCOE(在留資格認定証明書)の交付や在留資格の変更に想定以上の時間がかかり、予定していた「入社日」に間に合わないケースが頻発しています。

このようなイレギュラーが発生した際、企業側が焦って誤った指示を出すと、不法就労助長などの重大なコンプライアンス違反に直結します。本記事では、ビザの許可遅延が確定した際に、企業と内定者が取るべき適法な対応手順と、絶対にしてはいけないNG行動を徹底解説します。

1. 絶対NG:観光ビザでの前倒し入国や就労

海外から人材を呼び寄せる際、企業が最も陥りやすい深刻なミスが、「とりあえず観光ビザ(短期滞在)で入国させ、社内研修や実務をスタートさせる」という判断です。

就労ビザが正式に許可され、入国時に上陸許可を受けるまでは、いかなる形態であっても日本国内で就労することは法律で固く禁じられています。たとえ「無給の研修」や「見学」という名目であっても、実態として指揮命令下で業務に従事していれば不法就労とみなされるリスクが高く、最悪の場合、本人だけでなく企業側も処罰(不法就労助長罪)の対象となります。COEが下りるまでは、絶対に日本での業務をさせてはいけません。

2. 雇用契約の「入社日変更」と覚書の締結

COEの遅延が確実となった場合、実務上で最初に行うべきは「雇用契約書の入社日の修正」です。

入社日を過ぎても就労を開始できない状態を放置せず、内定者との間で「入社日を『就労ビザ取得後、日本に入国した日(または許可が下りた日)』に延期する」旨の覚書(合意書)を速やかに締結してください。この手続きを行うことで、企業側は「労働契約の不履行」によるトラブルを防ぎ、内定者も安心してビザの交付を待つことができます。また、入国管理局に対しても、適切な労務管理を行っている証明となります。

3. 国内の留学生を採用する場合の「落とし穴」

海外からの呼び寄せ(COE)ではなく、すでに日本にいる留学生を「留学ビザ」から「就労ビザ」へ変更申請している最中に入社日(4月1日など)を迎えてしまうケースにも、厳格な注意が必要です。

特例期間中の「正社員就労」は不可

在留期限の満了日までに変更申請を済ませていれば、審査結果が出るまで最長2ヶ月間の「特例期間」が与えられ、適法に日本に滞在できます。しかし、新しい就労ビザの許可が下りるまでは「正社員としてフルタイムで働くこと」はできません。

卒業後の「アルバイト継続」も原則違法

「ビザが下りるまで、今まで通りアルバイト(週28時間以内)として働いてもらおう」と考えるのも非常に危険です。留学生が学校を卒業・退学した時点で、本来の活動目的である「留学」の実態がなくなるため、付随していた「資格外活動許可」の効力も失効すると解釈されます。卒業後にビザ待ちの状態で就労させることは、不法就労に直結します。

4. 海外にいる状態での「リモート業務」という選択肢

もし、海外にいる内定者に、どうしても予定通りの日から業務に関わってほしい場合、「日本に入国せず、母国(海外)に滞在したままリモートで業務を行う」というアプローチが存在します。

本人が海外にいる間は、日本の入管法(不法就労の規定)は適用されません。ただしこの場合、日本の「雇用契約」としてそのまま扱うのではなく、現地の個人に対する「業務委託契約」として一時的に契約を結び直すなどの法的な整理が必要になります。税務処理や現地の労働法適用範囲が複雑になるため、実施する場合は慎重な制度設計が求められます。

5. ビザ審査が長期化する際の対応スタンス

入国管理局の審査期間は、申請時期(春先などの繁忙期)や、追加資料提出の有無によって大きく変動し、2〜3ヶ月以上かかることも珍しくありません。「まだ許可が下りないのか」と入管へ過度な催促を行うことは審査に良い影響を与えません。

企業が取るべき最も確実なスタンスは、内定者と密に連絡を取り合い不安を払拭すること、そして「許可が下りるまでは絶対に業務に就かせない」という法務上のラインを死守することです。コンプライアンスの徹底こそが、外国人材の安定した長期雇用への第一歩となります。